世界初「がん幹細胞」作製 iPS技術応用し神大と京大

f:id:haruaki1998:20140710130943j:plain 世界で初めて人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作る際の技術を応用し、がん細胞を次々に生み出す「がん幹細胞」を人工的に作ることに成功したと、神戸大と京都大iPS細胞研究所などの研究グループが9日付の米オンライン科学誌プロスワンに発表した。


 がん幹細胞は、薬で死滅させたがん細胞を再び生み出し、がんを再発させたり転移させたりするほか、薬も効きにくい。がん細胞の「親玉」ともいわれ注目されているが、ヒトの体内からは微量しか採取できず、研究が進まない原因となっていた。大量の人工増殖が可能となり、がん幹細胞を標的とした新しい診断技術や治療薬の開発につながることが期待される。

 iPS細胞は皮膚などの細胞に数種類の遺伝子を導入して作る。

 神戸大大学院医学研究科の青井貴之(たかし)特命教授と京大iPS細胞研究所の大嶋野歩(のぶ)研究員らのグループが、このうち「OCT3/4」「SOX2」「KLF4」という3遺伝子をヒトの大腸がん細胞に入れ、がん細胞を増殖させる培養液で10日間培養した結果、5%程度が大腸がん幹細胞に変化。大腸がん幹細胞をマウスに移植したところ、ヒトの大腸がんと同様の腫瘍ができた。遺伝子を入れたことで、がん細胞を若返らせた可能性があるという。

 細胞核が染まるかどうかで大腸がん幹細胞だけを選ぶ方法も開発。青井特命教授は「今後、胃がんなど別のがんでも人工的にがん幹細胞を作れる技術を開発し、多くの患者に役立てたい」と話す。(金井恒幸)